「おかえり、絃ちゃんっ」



今日は寄り道せず、真っ直ぐ家に帰る。



仮とはいえ、帰る家があるって幸せなことだなとしみじみ感じるようになった。



出迎えてくれたのは、葵くん。



「えっ、あ……ただいま、葵くん」



声を聞くだけならなんとも思わなかったけれど、顔を上げて目が合って……



ふと朝の出来事を思い出す。



「どうかした?」



首を傾げながらそう言う葵くんは、覚えていないのか、なんとも思っていないのか、いつも通りだ。



「う、ううん。何でもないの」



私ばっかりドキドキしちゃって……なんか理不尽。



靴を脱いで、先に行ってしまった葵くんの後についてリビングへ行くと、そこには蓮くんと葵くんしかいない。



雅さんはと聞いたら、この日はアルバイトだったみたい。



そんな日はいつも蓮くんが夕飯を作っていたみたいで、今日の夕飯は蓮くんが得意だという焼きそば。



出来たての焼きそばは、とても美味しくて、あの蓮くんも料理が出来たんだと感心していた。



そんな時に突如起こった兄弟喧嘩。



その間に私が口を挟んでしまって……



葵くんに謝らせてしまった。



その後、悪いからってお皿洗いもさせちゃって本当に申し訳ない。



断固として譲る気がなさそうで、やることがない私は、お言葉に甘えて一番風呂に入らせてもらうことにした。