「……えっと、ここ?」



ヒューっと音を立てながら、風が通り抜けるのは、私と大きくそびえ立つビルのような高層マンションの間。



白と黒を基調としたこのマンションは、見るからに家賃が高そうだ。



お母さんから手渡された住所と簡単な地図を見る限り、この場所に間違いない。



もう1度そのメモを確認してから、中に入る。



「……っ」



内装も大理石のような輝きを放っていて、思わず言葉を無くす。



高層マンションに来てしまった時点で、今まで狭いアパートに暮らしていた私は、住む世界が違うと感じていたけれど、やっぱり何かの間違いなんじゃないかと疑ってしまう。



流石、高級そうなマンションなだけあって、防犯も完璧。



入口もオートロックになっていて、専用のカードがないと開かないようだ。



私は、お母さんに言われた通り、入口の隣にあったインターフォンのベルを鳴らす。



言われた部屋番号は、『2202』



番号を押してしばらくすると、スピーカーから「はい」と声が聞こえる。



この時に、異変に気づくべきだった。



だって、今戻ればギリギリ間に合ったかもしれない。



「小鳥遊です」



名前を名乗ると解除されるオートロック。



ホテルのようなそのホールに入ると、ツルツルと輝くエレベーターがお出迎え。



それに乗って、22階まで上がり、降りてから『2202』の部屋を目指す。



「ここだよね?」



ドアの横にも、インターフォンがあったので、押すとピンポーンという呼び鈴が中から聞こえてくる。



「……こんにちは」



「……っ!?」



そして、開けられたドアの向こうには、衝撃的なものが待っていた─────