あの嵐のあと、事務所の顧問弁護士さんがやって来た。

あっちゃんとは大学時代の友人だとかで、シルバーフレームのメガネが似合う知的な感じの弁護士さんがやって来た。


「お、君が噂の・・・。うんうん、良い子だね。おじさんが飴をあげよう」

頭をポンポンされて飴玉を渡された私は、一瞬呆気に取られるも


「ありがとうございます。顧問弁護士の方ですよね?社長は今応接セットにおりますので、ご案内します」


「あぁ、あっちね!大丈夫、分かるか」


そう言うとヒラヒラと手を振って間違いなくそちらに歩いていく姿を見て、私は給湯室に行く事にした。
その前に智子さんに一つ質問してから。


5分後、応接セットの前のパーテーションを軽く叩き


「アカリさん、入っても大丈夫ですか?お茶お持ちしました」


「えぇ、平気よ」


そう聞いてから入ると、丁度書類等の確認が済んだところらしくて弁護士さんがそれらをまとめてファイルにしまっているところだった。


邪魔にならないところにお茶を二人ともに置く。


「あら、よくコージには梅昆布茶だって分かったわね」


驚くあっちゃんに、私は素直に答えた。


「お客様が弁護士さんで何度か来られてるはずなので、智子さんにどの飲み物が好みか聞いてから準備したんです。遅くなり申し訳ありません」


そう言って弁護士さんの方に頭を下げる。


「うん、ほんとに良い子だね、君は。初めましてここの顧問弁護士の倉持浩史だよ。これ渡しとくね」

そう言ってもらった名刺は、倉持法律事務所 倉持浩史となっていた。


「独立されてるんですか?」


あっちゃんと同じくらいだから、確かに独立しててもおかしくはない。


「いや、大先生がまだ現役バリバリで仕事してるの。俺は三代目ね。うちの事務所所長はまだ親父なんだよ」

そう言って微笑んでくれた。
切れ者の雰囲気はあるものの、その柔らかい笑みから優しい人柄を感じた。