「ストッキング脱いで」

 座ったままの圭さんが私に命令した。

「いえ、あの…」

「破れてるんだし、ソレもう意味ないでしょ」

 圭さんは立ちすくむ私の足に視線を這わした後、見上げた。
 必然的に上目遣い。


 濃すぎない程度にホリが深い、とか

 まつ毛が天然なのに長い、とか

 目立たないけど泣きボクロがある。

 なんて危機的な状況にありながら、観察してしまう。

 いつまでも行動に移らない私に圭さんはソファの、自分の隣をポンポンと叩いた。
 座ることを口に出さずに強要した。

 ストッキングを脱ぐことより何倍もマシと隣に座ったのに、どういう訳か圭さんは立ち上がってしまった。

 さっきとは逆に私が見上げる。


 高い…

 高身長に見えるのは、上から目線とこの態度のせいだけでは決してないと思う。

 私の痛いほど持ち上げられていた首は、次第にゆっくりと下がった。
 なぜなら圭さんがゆっくりと膝まづいたから…

 片膝を床につくと、私の顔をのぞき込んだ。


 近づいた端正な顔に見とれてた、というより近すぎて顔しか見られなかった。

 強制的に限定された視界の死角、なぜか手が私の足に触れた。


「…なっ!」


 次の瞬間、ストッキングはビリビリと引き裂かれた。