あまりの勢いに、流石の迅も勝てなかったのか渡された油性ペンで男の服にサインする。

まるでアイドルか何かの扱いに、思わず苦笑。確かに学校で迅は慕われる存在で、それは族のメンバーも同じだが、

少しばかり、この男からは……慕う、とは違う何かを感じた










敢えて言葉にするなら………………、

その場のノリで楽しんでいる先輩と、振り回されている後輩。みたいな

男の口調からすると、迅とは初対面みたいだが…………………………、




「おおおお!かっこええなぁ!家宝にするわ~」



「……それより、なんでアンタが此処に?」



「ちょっ、今のスルー!?わい寂しいわぁ、

冷めた奴が覇王の頭になった、って聞いたんはあながち本当らしいな~」





などと言いながら、動いているのは口だけではなく作業する手も器用に動かし、

先程と同様にいくつものタコ焼きを引っくり返しては、経木舟皿へと乗せ、後ろに居た客へと渡す。

『へい、まいどあり~』と、陽気な声でお客らを捌いていく様は…………ショッピングモールの食事処で見る、店員そのものだ



「なーんてな、嘘や嘘

冷たい印象を持ったんは一瞬やったわ、

兄ちゃん顔が整い過ぎてて冷めて見えるだけやんなぁ」



「…………」



「いい顔して、よう笑う…………それが今の覇王の頭



せやから、少しばかりお節介したっちゅー話やわ。気ぃ悪くしたら許してや」