「美依、ちょっと待って!」

放課後、知紘と帰ろうとしたら何やら慌てた様子の華に声をかけられた。


「どうしたの?」

「今から時間ある?」


「え、今から?」

「そう、今から」


特に何も用事はないけど、チラッと隣にいる知紘を伺う。


「ねぇ、小波くん。今日くらい美依のことわたしに貸してくれてもよくない?」


「………」


華の問いかけに、無言のままむすっとしている。


「ねぇ、小波くんってば」

「……僕の美依どこに連れて行く気?」


「どこって別にどこでもいいでしょ?」

「ふーん」


おっ、なんだか許してくれそうな気がする。


「美依」

「なぁに?」


「夕方の6時までに帰ってきて」


どうやら門限があるようです。


「わ、わかった。なるべく早く帰るようにするね?」