数日ぶりに訪れた『白銀亭』。青葉の祭りだからか飾られた花が多い感じがする。さきほど渡された白い花と同じものの花束が入口に飾ってあったから、そこから抜き取られたものだと思った。シュティーナはふっと微笑む。
シュティーナとイエーオリはテーブルに案内された。清潔なテーブルクロスの上に、花が飾られてある。
「ねぇ見て。笑ってるみたいねこの花。ふふ」
「シュティーナ様……こんなこと、伯爵様に知られたら」
イエーオリがあまりに心配そうな顔をするので、シュティーナは笑顔を作る。
「そんな顔しないで。お料理を、食べるだけなのよ。」
男に会いに来ている。イエーオリはそう思っているのだ。美味しい料理に会いに来ているだけなのだからそんなに心配することじゃない。シュティーナはそう思った。
「とっても美味しいのよ。イエーオリも気に入ると思うわ」
(悪いことをしているわけじゃないもの)
窓からは、広場の舞台もよく見えた。いまは、男性数人がお互いを肩車したり、宙返りをしたりしている。技が決まると、観客から拍手が送られていた。広場全体に人々の笑顔が溢れていた。露店も賑わっている。
「お待たせしました」
サムが、香ばしく食欲をそそる匂いとともに料理を運んできた。
「わぁ……」
「スーザントの塩をふり焼いたささみです」
ふっくら焼かれたささみ、そして隣に色の良い野菜が添えられている。
「魚介のスープ、それとスヴォルベリで育った羊のチーズです」
チーズはひとくちに切られ、トマトと一緒に並べられていた。
「スヴォルベリのチーズはとても美味しいですからね」
サムがそう言うと、イエーオリが頷く。
「生産量も輸出量も多くて、スヴォルベリ名産のひとつですしね」
「他の土地から来た客にも喜ばれますよ」
「なるほど。観光客に地元の食材を使った料理はいいですね」
「そうなんです。ここで料理を食べて気に入り、露店などで材料を買っていくひとたちもいます」
「それは良い広がりですね。町も民衆も潤う」
イエーオリとサムが会話をしているのをシュティーナは不思議な気持ちで見ていた。楽しそうだった。するとサムがその視線に気付いて話を止めた。
「申し訳ありません。お喋りが過ぎました。料理が冷めてしまいますね」
「いや、こちらこそ仕事中に申し訳ない」
(止めることなかったのにな。できれば、3人で食事をしながらお話したいのに)
シュティーナは思ったけれど、そうもいかない。「ごゆっくり」と言って下がったサムの背中を目で追う。ちょっと残念に思うシュティーナだったけれど、目の前には美味しそうな料理が待っているのだ。
「さ、いただきましょう。温かいうちに」
イエーオリもとても嬉しそうだった。ささみを小さく切り、口に入れる。ふっくらとした鶏の味をスーザントの塩が引き立てていた。もっと食べたいと次々に味わう。
「ああ、やっぱり美味しい。どう? イエーオリ」
「はい。本当に美味しいですね」
「腕のいい料理人だと思うの」
「さきほどの話も、地域の食材をうまく扱うなと思っておりましたよ。扱いつつ先のことも想像している」
頷きながら、イエーオリは料理を口にした。
「ふたりは、話が合いそうね」
シュティーナがそう言うと、イエーオリがおどけたように肩をすくめる。
シュティーナとイエーオリはテーブルに案内された。清潔なテーブルクロスの上に、花が飾られてある。
「ねぇ見て。笑ってるみたいねこの花。ふふ」
「シュティーナ様……こんなこと、伯爵様に知られたら」
イエーオリがあまりに心配そうな顔をするので、シュティーナは笑顔を作る。
「そんな顔しないで。お料理を、食べるだけなのよ。」
男に会いに来ている。イエーオリはそう思っているのだ。美味しい料理に会いに来ているだけなのだからそんなに心配することじゃない。シュティーナはそう思った。
「とっても美味しいのよ。イエーオリも気に入ると思うわ」
(悪いことをしているわけじゃないもの)
窓からは、広場の舞台もよく見えた。いまは、男性数人がお互いを肩車したり、宙返りをしたりしている。技が決まると、観客から拍手が送られていた。広場全体に人々の笑顔が溢れていた。露店も賑わっている。
「お待たせしました」
サムが、香ばしく食欲をそそる匂いとともに料理を運んできた。
「わぁ……」
「スーザントの塩をふり焼いたささみです」
ふっくら焼かれたささみ、そして隣に色の良い野菜が添えられている。
「魚介のスープ、それとスヴォルベリで育った羊のチーズです」
チーズはひとくちに切られ、トマトと一緒に並べられていた。
「スヴォルベリのチーズはとても美味しいですからね」
サムがそう言うと、イエーオリが頷く。
「生産量も輸出量も多くて、スヴォルベリ名産のひとつですしね」
「他の土地から来た客にも喜ばれますよ」
「なるほど。観光客に地元の食材を使った料理はいいですね」
「そうなんです。ここで料理を食べて気に入り、露店などで材料を買っていくひとたちもいます」
「それは良い広がりですね。町も民衆も潤う」
イエーオリとサムが会話をしているのをシュティーナは不思議な気持ちで見ていた。楽しそうだった。するとサムがその視線に気付いて話を止めた。
「申し訳ありません。お喋りが過ぎました。料理が冷めてしまいますね」
「いや、こちらこそ仕事中に申し訳ない」
(止めることなかったのにな。できれば、3人で食事をしながらお話したいのに)
シュティーナは思ったけれど、そうもいかない。「ごゆっくり」と言って下がったサムの背中を目で追う。ちょっと残念に思うシュティーナだったけれど、目の前には美味しそうな料理が待っているのだ。
「さ、いただきましょう。温かいうちに」
イエーオリもとても嬉しそうだった。ささみを小さく切り、口に入れる。ふっくらとした鶏の味をスーザントの塩が引き立てていた。もっと食べたいと次々に味わう。
「ああ、やっぱり美味しい。どう? イエーオリ」
「はい。本当に美味しいですね」
「腕のいい料理人だと思うの」
「さきほどの話も、地域の食材をうまく扱うなと思っておりましたよ。扱いつつ先のことも想像している」
頷きながら、イエーオリは料理を口にした。
「ふたりは、話が合いそうね」
シュティーナがそう言うと、イエーオリがおどけたように肩をすくめる。