地方の中核都市、その中心から更に電車で三十分弱。日本を代表する家電メーカーの工場の最寄駅は市の規模に不釣合いな数の呑み屋が立ち並び、平日はもちろんだけど、週末はどこも賑わっている。

「こんばんはー」

それでも私の行きつけの焼き鳥屋は小さくて古くて、大抵常連客しかいなくて。今夜もそれは変わらない。

「おっ、早希ちゃん!久しぶりだね〜」

「最近ちょっと忙しくって。カウンター、いいです?」

「もちろん!こっち座ってよ」

ダミ声で笑顔の優しい大将が用意してくれた席について、おしぼりを使いながら、いつもと同じ注文をする。

「生と、枝豆と‥‥串は砂肝とネギマと手羽先にしよっかな」

「土手煮は、どうする?」

「ください」

「あいよっ」

にかっと笑って準備を始めた大将の手元を眺めながら、ふうっと一息つく。