それからふたりで私の部屋に戻る。

ファリス様はこれまで一言も声を発さず、私をソファーに座らせたのち、私の向かいで前に手を組んだまま、考え込むような表情を浮かべ座っていた。

この無言の時間、私から声をかけた方がいいのだろうか?

唐突に謝罪の言葉から入るべきか、それともまったく関係のない話から入って、謝る方向に持っていくべきか、色々と考える。

お互い冷静になった今、自分の心の内を話せるチャンスでもあるのだから、上手く話を切り出していかなければ。

そのためにはなんと声をかけたらいいだろう。


……と、私もまた考えあぐねていると、ファリス様のほうから話を切り出した。

「辛い思いをさせてしまって申し訳ありません。いかに、私が自己中であったかを思い知りました。ビアンカはこんなにも苦しい思いをしていたというのに、私は……」

「ファリス様……」

「このような状態で、私を好きになれるわけがありませんね。傍にいて私を見てもらって、思いを伝え続けていれば、あなたも私のことを好きになると思っていた。でも、それは独りよがりの考えだと気づきました。一番はあなたの気持ちを考えて行動するのが大事であったのに、どうして今までそれに気づかなかったのでしょう。……私はとても愚かな人間でした」


そう言ってファリス様は俯き、拳をグッと握った。
ファリス様の言葉に、咄嗟にこう返す。


「愚かだなんて、そんなことありませんわファリス様。私のほうこそ、ファリス様がそれほどまでに私のことを思ってくれていたのに、向き合おうとしなかったのがいけなかったのです。先の不安ばかりを考え、自分の気持ちにすら向き合おうとしなかった。私たちの始まりが順序通りではなかったばかりに」