「おい、ティーダ」

決勝の舞台に上がる直前。

ティーダを呼び止めたのは、すずに付き添われて控室で寝ている筈の龍一郎だった。

「ばっか龍一郎、ちゃんと休んでろよ」

ティーダは慌てる。

精霊女王の力で治癒はしたものの、龍一郎の体は完治ではない。

まだ全身が痛み、悲鳴を上げている筈だ。

女王は、その悲鳴と苦痛を幾分和らげただけに過ぎない。

龍一郎は自分のダメージをそんな事呼ばわりして。

「よく聞けよ」

最終決戦に臨むティーダに告げる。

「多分ルカは、時間操作を戦闘に応用してくる。数秒後の過去や未来に移動して、お前の攻撃を次々回避してくる。そのスピードは…禿鷲の時凍えなんかよりずっと速ぇ」

「!」

時凍えより速い?

ティーダが風の精霊女王を召喚してやっと互角の、あれよりも?

「いいかティーダ、出し惜しみすんな。試合開始と同時に決めに行け。長引くほど、魔力を消耗しているお前は不利だ。ワンパンで決めるくらいのつもりで行け」