京急線の花月園の駅から生麦の市場の方へ少し歩くと、道念稲荷神社という小さなお稲荷さまがある。

武蔵国風土記にもある古い神社で、地域の鎮守として徳川幕府の頃には既に祀られており、六月の蛇も蚊も(じゃもかも)祭という例祭のときには、静かな生麦の町が賑やかになる。

祭の朝、茅で蛇を模した大縄のようなものを担いで、

「蛇も蚊も出たけぇ、日よりの雨けぇ」

と不思議な掛け声とともに練り歩き、遠くでは祭囃子も聞こえてくる。

この道念稲荷から歩いてすぐの鶴見の町で、藤崎美優は生まれた。