軍妃候補として決まった私は、後宮へと行く為に荷造りをしていた。


まさか決まると思っていなかったお婆様は、顔を歪め何も言わず、私が支度をするのを見ていた。


支度をしおえた私に、お婆様はやっと口を開いた。


「冥紗…しっかり天子様をお護りいたせ。
しかし、その仮面を取るのは官職を得た後に天子様に危機迫った時取る事を許そう。
それまでは聖人である事をあかしてはならぬ。」


お婆様の言葉に頷いたが、1つ気付いて問う


『官職を得る前に天子様が危ない目に遭われたら?』


私のその質問に、お婆様は一息ついて言った。


「その時は後宮を去る事じゃ。
しかし、力を使わなくともお護りする事も出来る。
そなたが力を使う時は天子様が傷つかれた時のみ。
傷付かれない様にお護りすればよいのだ。」


なるほど…。


それなれば、お婆様との約束を守れる。


けれど、1番良いのは何も起こらない事だ…。



あの心優しき公子様の治世が、どうか太平である様に…


そう願いながら、私は家を出た。