「そんな緊張すんなって。リラックスしないと走れないぞ?」



中継地点の控えに立つあたしに、泰知は突然声をかけてきた。




「うるさい、大丈夫だし。」



「いや、大丈夫じゃないから。」




何がおかしいのか、泰知は腹を抱えて笑う。




「そんな、笑わないでよ。」



「だって………顔と、ブフッ…動き………合ってなさすぎて………はあ、やべ。」



緊張すると顔が誰よりも鬼の形相になるあたしのこと良くわかっててここまでバカにしてくる根性だけは褒めてあげたい。



「大丈夫だって、いつも通り。」



ひとしきり笑った泰知が、あたしの目の前に立つ。


ポンと、両肩に彼の両手が置かれる。



すると不思議なことに自然と力が抜けていく。


そうだ、泰知はわけのわからないけどとても効果的な超能力者だった。


どんなに不安で、怖くて、緊張してて泣きたい時でも、泰知が肩に手を置くと自然と力は抜けていき、我に帰ることが出来る。




ふう.....と息を吐き出す。



吐き出した息はほんのり白く、秋が深まってきたことを感じさせる。


今までこわばっていた肩の力が一気に抜けていったため、少しだけ肩に違和感を感じた。