「思ってたより時間かかりましたね。」
「あんたにだけは言われたくない。」
早速始まったと思って声の方を見てみれば、やはり喧嘩腰の當山が靴ひもを丁寧に結ぶ夕夏の前に立っていた。
この二人、本当は仲がいいんだか悪いんだか。
まあ、仲良くしているところを見たことはないけれど。
俺はそんな二人のやりとりを二階にある男子の部室の前から見る。
「お、とうとう戻ってきたか。」
「あ、凪斗さん!お久しぶりです!!」
突然、どこからか声が聞こえてきたと思えば、その主は、つい十日ほど前に山仲高校を卒業したばかりの増田凪斗さんだった。