ガタンガタンと歪な音を立てながらも、心地よく揺れる電車に身を委ねる。
最近開通したらしい地元の駅につながる電車の座席は真新しく、ふかふかだ。
都会の潰れてへこたれたシートとはまるで大違い。
誰も乗る人がいないせいか、ガランとしていて足を少し伸ばしても気にはならない。
もうそろそろ着く。
穏やかな海が見えてきたのがその証拠だ。
海なのに湖と錯覚してしまうのはきっと、海をここだけ切り取るように島が両方から湾曲して水平線を隠しているからかもしれない。
今日も穏やかにキラキラと輝く波の流れを見て、ああ、帰ってきたんだと実感する。
大学のサークル仲間と旅行に行き過ぎたせいで、ボロボロになってしまったスーツケースは最近のバイト代で新しく買い換えた。
新しすぎて新品の匂いがするけれど、この電車の新しさにはちょうど調和している。
『次は、陸中山田、陸中山田でございます。降り口は左となっております。お降りの際は、お忘れ物のないようにご確認ください。』
車内アナウンスを聞いてからあたしは身支度を始めた。
きっと空模様を見た感じでは、上着はスーツケースの中に閉まっても良さそうだ。