「違う、違う。そうじゃない」
「わかってる!こうやろ?」
「だから、違うっての」

本日、月曜日。
嬉しい偶然で休みがかぶった俺たちは昼食を作ってる最中。

「もう!あたしがするから圭一は向こうで待っててよ」
「そうしたいけど、出来てないし」
「出来るってゆってんやんか!」

俺が宥めるも逆に半ギレ状態の俺の妻、真。

結婚して真のお腹には子供もいて、ゆったりとした毎日を送ってるのに、休みの今日に限ってこんな空気になるのも俺たちらしいと言えば、らしいのかもしれない。
でも、俺の持ちレシピを真が挑戦するって言うから教えてるのに逆ギレするのはどうかと思う。

「真の方こそ身重なんだからゆっくりすれば?」
「あたしにでけへんって言いたいわけ?」
「いや、そういうことじゃなくて」
「じゃあ、もういい!」

持ってた包丁を流しに置いてリビングへ戻る。

この包丁使うのに流しに置いてしまったら洗わなきゃいけない。
怒った腹いせにした小さな反抗なんだろうけど、“子供か”と突っ込みたくなる。

子供が出来たから仕事を辞めるのかと思えば“出来るところまでやる!”って言って、好きなようにさせようと思ったから止めなかったけど、真の仲の良い同僚に聞けば依然と変わらずバリバリ動いてるらしく全然妊婦らしくない。
周りが心配するくらい動きまくってるらしい。

そんな話を聞いて俺が心配しないわけないし、やっぱり仕事辞めない?ってさりげなく聞いてみたときはえらく怒って今みたいになった。
それも真らしいと言えば真らしいけど。

「なぁ、真」
「なに?」

色々心配なことは多いけど、今はまだ自由に出来るうちは真のやりたいようにすればいいと思う俺も甘いのかもしれない。

真のことを心配しながらも、残り僅かな期間でも仕事をさせてあげられたらと思うのは俺が真を好きだからなんだろうと思う。
……気苦労は絶えないけど。

「美味しいの作るから機嫌直してくれない?」
「美味しいかどうかは食べてから決める」

こんなこと言うところも可愛いと思ってしまう俺は病気なんだろう。
真がいなくなったら後追い自殺でもするんじゃないかってくらい愛しちゃってる。

「ところでさ、」
「ん?」
「後藤とアヤの結婚式の件、どうなった?」
「あたし何も聞いてないけど。アヤちゃんから聞いてるんじゃないん?」
「………」
「「……え?」」

二人で顔を見合わせて首を傾げ合う。

再来週、アヤと後藤が結婚する。
一番の友人であると思ってたのに招待状すら届いてない俺たち。
一体どういう事になってるのか不思議に思う。

「もしかして招待されへんってヤツ?」
「いや、一番招待されなきゃいけないの俺らでしょ」

一体どうなってるんだと二人で文句を言ってると、突然鳴り出すインターフォン。
真が立ち上がろうとしたけど、それを阻止して俺が玄関に向かおうとしたら勝手に開いた玄関のドア。

「遅くなってごめ~ん!!」

こっちがいらっしゃいも言ってないのに当たり前のように入ってきたのは後藤。
その後を続いて入って来たのはもちろんアヤだ。
うるさくてごめん、と眉を下げて謝る。
確かに騒がしいと思うけど、いつもことだから特に気にしてはいない。

「はい、招待状!」

ソファーに座ってる真の隣に掛けて、バッグから取り出したのは手作りらしい招待状。
普通は式場で用意してくれるであろう招待状が届かなかったのは別に用意されていたかららしい。
まぁ、時期的にありえないけど。

キッチンにいた俺も真の背後に移動して一緒に見ることにした。