でもなぁ。しっかり休めと言われても、多少喉が痛いくらいで熱も下がったみたいだし、身体はだるくない。

普段から『じっとしていろ』と言われるくらい動き回っている私だ。黙って寝ているのも落ち着かない。

だからって身体を動かし始めたら、家族総出で怒られそうな気もするから、読みかけの本でも読もうかな。

そっと立ち上がったら、ノックの音がして母上が入ってきた。

一瞬、何してるんだ的な視線が痛かったけど、諦めたように溜め息をつかれる。

「ノーラ。王弟殿下がお見舞いにいらしているのだけど……」

「はい?」

「ですから、王弟殿下ですよ。何度かお見舞いの品もいただいているのだけれど、あなた、なにかしたの?」

知らないよ。だいたい、私がなにをするって言うの?

「一応、私の方が先に王女を見つけたから、お礼とかかな?」

「だからと言って、王族が貴族の屋敷まで来るものですか。追い返すわけにもいかないし……お会いする?」

首を傾げてるけど、それは会えってことなんだよね。

「急いで仕度します」

さすがに寝間着姿で会うわけにはいかないから、侍女を呼び着替えをしようとして……。

大騒ぎしながら、豪華なドレスばかりを持ってくるから、眉を吊り上げる。

「お馬鹿さんなのっ⁉ どこの誰がこの寒い真冬にレースヒラヒラの白いドレスを着るの⁉ 今は時間かけてる暇はな……げほっ」

最後には咳き込んで、真っ赤になりながら身悶えるはめに陥った。