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「父上。最近耄碌されたのではなくて?」

忘れ物のバスケット……もとい、昼食をつきつけたら、それを受け取った父上は、私とその隣に立つウォル殿下を交互に見た。

「それにかこつけて、楽しそうにデートしている娘に文句を言われる筋合いはない」

「そんなことしてるはずないでしょう! 殿下とは来る途中で会いましたの! 送ってくださっただけですから!」

「お前も、大変な方に見初められたな」

なにを感慨深げにしているんだ! 妙齢の娘を持つ父親としてなってないんじゃないの?

ここはいたいけな娘を、父親として守るところでしょう⁉

私が“いたいけな娘”に見えるかどうかはともかくとして、ここ最近、毎日昼食を忘れていく父上。

その都度、私が城に来て、何故かウォル殿下と会って、騎士団の詰所まで送られて、そのまま内宮まで連れていかれ、ご飯を食べさせてもらう。

最初はびっくりしたし、まさかの普段着で内宮に入れないからと拒否していたけど、ウォル殿下ってやんわりと強引で、気がつけばご一緒すること多数。

……なんか、慣れてきた。


「次回は母上に来てもらうかな」

ポソリと呟くと、ウォル殿下が私を見下ろした。

「わかりました。私があなたの屋敷に行けばいいんですね?」

来るつもりなんですか⁉