誠に誘(いざな)われたのは、客間だった。


黎の隣に座って、机を挟んだ正面に誠と美愛、美愛の隣に弥生、そして少し離れて架がいる。


「黎から総て聞いているそうだね?」
 

藪から棒に、誠はそう問うてきた。


「はい」
 

答えながら真紅は、そっと架の様子を窺う。


総て、とは、架の父親のこともさしているのだろう。


案の定、そのことを知らないという架は、特に動揺した態度も示さなかった。


「その上で、黎と交際されると?」


「黎の生い立ちは、今の私には関係ありません。それより……黎は、私の命を助けてくれた人なんです」