「あ、黎!」


「おはよう、真紅」
 

真紅が母の紅亜と、叔母の紅緒とともに住んでいる古民家の朝に訪ねて来た黎に、真紅は駆け寄った。


「おはよう。今日は?」


真紅が並ぶと、二人はなんとなく庭の方へ歩く。


「両方」


「忙しいね……あの、
「それは言うな。俺が来たくて来てるんだ」
 

真紅の言を、聞く前に黎は封じた。


『何度でも、逢いに行くから』と言った黎は、毎朝古民家にやってくる。


真紅と少し話をして、そのまま大学へ行ったり、休講のときは病院へ行く。


本当に毎日来てくれるので、黎が無理をしていないか心配になる真紅なのだが……。
 

そっと見上げると、黎はふわっと笑った。


「俺より、真紅の方が心配だ。紅緒様の修業は厳しくないか?」