大好きないちご飴を口に放り込んで

帰ろうと席を立つ


ドアに向かおうと後ろを振り向くと、教室に残っていたのは廊下側の後ろから2番目の席にいる彼。


今年初めて同じクラスになってから1度もちゃんと話したことのない、地味な男子

五十嵐 冬里(いがらし とうり)くんと私だけだった



クラスメイトの女の子がよく話していた

「五十嵐君ってさ、名前と雰囲気のミスマッチ感半端ないよね~」


失礼だと思いながらも、その言葉に納得してしまう私がいた



そんなことを思い出しながらドアに向かった



「バイバイ、五十嵐君」


「え、あ、うん。また明日、姫野さん」


私があいさつすると、どもりながらもまた明日、と言ってくれたことに喜びを覚えつつ、その日は学校を後にした