「目立ってんじゃねぇよ、馬鹿」



男たちが舌打ちをしながら逃げ去って。
私は男たちの行方を視線で追っていた竜にギロリと睨みつけられながらそう言われた。
私はビクッと肩を揺らす。



「な、なによ…。助けてなんて、言ってない」



厳しい言葉を投げられて、私は呆けていた頭が急にしゃんとすると思わずそんな憎まれ口を叩いていた。
本当は、嬉しかった。

助けてくれたんだって。
宇都木関係の事からしか守ってくれないのだと思っていたから。
だからこそ、私が菜穂を守らなきゃって。



「そうかよ」



竜は、それ以上何も言わず、身を正すと私の後ろで震えている菜穂に向かう。



「大丈夫か?怖い思いをしたな」

「い、いえ…。あの、ありがとうございます」



菜穂は竜を見ると少しホッとしたように表情を緩め頭を下げた。
私だって、そんな風にしおらしくお礼くらい言いたい。



なんでできなかったんだろう。