肩に乗せられた手に、ビクッと身体を震わせて振り向いた。



「…大丈夫かい?」



きっと、とても化け物でも見たかのような顔だったのだろう、びっくりした表情でそこに立っていたのは見覚えのない一人の青年。
穏やかな顔つきで、黒髪の好青年。
二重の暖かな瞳のその彼は、心配そうに私を見る。



「だ…れ…」

「そんなことより、顔色が悪い。ベランダに、風のあたるところに行きましょう」

「え……」



手を差し伸べられたが、警戒心の高まっている私はその手をとれない。
見知らぬ人は怖い。
その想いが心から消えない。




「大丈夫。僕は貴方に危害を加えるつもりはありません。信じられないかもしれないけれど。僕に身を任せてくれませんか?…幸子さん」



この人、私…の事を幸子お嬢様の事を知ってる…?
半信半疑で、私はその手を取った。