「もう!お父さん!また靴下脱ぎっぱなし!」



狭いアパートの一室に響き渡る私の声。
指先で汚いものを触るようにつまみ上げたそれを、うげっと顔を歪ませながら洗濯機の中へ放り投げた。



「ん~、あー、すまん、すまん」

「すまん、すまん、じゃないわよ!何度言ったらわかるの!」




プリプリと怒りは収まらず、乱暴に洗濯機の扉を閉めると、力強くボタンを押しこみ洗濯をスタートさせる。
私の毎朝の日常。



「紗千(さち)、目玉焼き一つでいいだろう?」

「うん。半熟で!」

「はいよ」



我が小野寺家は幼い頃に母を亡くし、父と二人暮らし。
その暮らしに文句なんてもちろんないけれど、父のだらしなさとお人好し加減にはほとほと参っている。


お人よし過ぎるエピソードといえば、昔の同級生に泣きつかれ借金の保証人になったことが大きな間違い。
案の定同級生は姿をくらまし、その借金のつけはお父さんにやってきた。