乃愛が死んだ。


その事実を受け入れるにはしばらく時間がかかりそうだった。


霊安室へと移動された乃愛の体はとても綺麗で、まるでただ眠っているようにすら見えた。


損傷が激しかったのは体の方で、その顔は生前のままだったのだ。


乃愛の恋人だった早瀬幸弘は乃愛の手をずっと握りしめている。


だけどまだその目には涙はなかった。


あたしたちと同じで、涙が出るまでには時間がかかりそうだった。


「私たちは、少し外させてもらうよ」


乃愛の両親がそう言い、霊安室を出て行った。


病院側からの説明を聞いたりしなきゃいけないんだろう。


2人が出て行った途端、空気がふっと軽くなった。


誰かが雰囲気を変えたような気配がして、あたしは友人たちを見回した。