「このハーブは?」


「カレンデュラです。オレンジが鮮やかで綺麗でしょう?」



 イルヴィスとのティータイム。最初の3回目くらいまでは憂うつで仕方がなかったが、回を重ねるごとに、この時間を楽しいと感じられるようになってきた。


 彼とはそう多くの会話を交わすわけではないが、噂されるほどに冷淡な人物だとは感じられない。



「確かに、これは目にも楽しいな」


「はい!……ただ、味の方は良く言えばまろやか、悪く言えばかなり薄いです。濃く淹れてはみましたが、蜂蜜なんかで味を調整した方が良いかもしれません」



 コポコポと音を立てながらカレンデュラティーをカップに入れる。

 優しい黄色のお茶に、アリシアの頬がふっと緩んだ。



「どうぞお召し上がりください」


「頂こう」



 イルヴィスがその形の良い唇にティーカップを付けるのを、アリシアは少し緊張しながら見守る。



「スプーン一杯分だけ、蜂蜜を足してもらえるか?」



 彼は薄く目を閉じて言った。アリシアは言われた通りに蜂蜜をすくい、クルクルとかき回した。

 再びイルヴィスはカレンデュラティーを口に含み、今度はゆっくりうなずいた。



「うん、悪くない……」