□柚香side■



私の幼馴染みは、強い子だった。


「あれ、柚香?どっか行くの?」


「千歳」


バックに荷物を詰めながら、私は自分の旦那に挨拶をする。


「……もしかして、沙耶?」


「勘が良いね。なんで、わかったの?」


「柚香がそんなに慌てるって、沙耶相手だけだし。ほら、スマホ、鞄に入ってないよ」


それを拾ってくれる千歳は笑い、


「あ、ありがとー」


私の頭を撫でた。


「気を付けてな」


「うん」


結婚して、沙耶達とあまり変わらない日数しか経っていないが、私達が喧嘩をすることはあまりなく。


こんな感じで、のんびりと二人で毎日を生きていた。


「―柚香様、御車の準備が整いました」


ドアを開けて、微笑んでいるのは、先日、千歳が私につけてくれた運転手兼護衛の妖さん(よう)。


彼もまた、生粋の妖怪であり、狐なんだそうだ。


「ありがとう」


そんな彼の運転する車に乗り、目的地を伝えて乗ること25分。


漸く着いた、御園本家。


ぶっちゃけ、家まではそうかからないのだが、御園本家の庭は広く。


そこに入ってから、10分くらいの時間を有する。