「うおーい、クラリス!」

王宮に赴任してから早1週間。クラリスは王宮使用人の間で注目の的になっていた。

みな新入りの使用人がどんな人物なのか興味があるのだろう、よく話しかけられてクラリスは疲れていた。

そして今もこうして王宮付き庭師のジェラルドに話しかけられたのだが、クラリスは笑顔で挨拶をする。

「こんにちは、ジェラルドさん」

ジェラルドは仕事の最中のようで、土で薄汚れた濃紺の仕事着と麦わら帽子を被って、手には作業用の道具を持っている。

いつも陽気なジェラルドは明るい口調でどんどん自分の話を話すので、クラリスは頷くだけで良かった。そのため人と話すのが得意ではないクラリスも苦手意識を持つことなく会話できるのだった。

「聞いてくれよクラリス!って、今から急ぎのがあるか?」

「いえ、特には」

その答えにジェラルドは満足そうに「そいつは良かった」と、目を輝かせる。

「クラリスにちっと聞いてほしいことがあってな」

クラリスは首を傾げる。

クラリスは苦手意識を持つことなく話をできると言ったが、それはクラリスが饒舌に話すということではない。ただクラリスは頷くだけで良いため、比較的楽に会話が成り立つというだけだ。

クラリスと話すのはつまらないだろうことは今までも言われてきており、クラリス自身も自覚していた。そのため自分に話したいことと言われても検討がつかなかった。