美陽と悠琉が付き合い始め、束李と龍月の仲がギスギスし始めた。
束李は美陽と悠琉の関係を薄々勘づいたようで、美陽ともあまり帰らなくなった。
美陽はそのためか少し落ち込んでいた。

「どうかしたの?美陽ちゃん」

悠琉がため息をつく美陽を心配する。

「悠琉さん…、私はどうしたらいいのでしょうか」

今の現状を悠琉に相談する。
悠琉は優しく微笑み言う。

「そのまんまを言えばいいんじゃないかな。上田は気づいているんでしょ俺達の事。だったら、美陽ちゃんが美陽ちゃんの言葉で伝えなきゃ」

悠琉は俯く美陽の頭を撫でた。
美陽は「はい」と言って少し元気を取り戻したようだ。

「俺の方も聞かなきゃだな」

美陽と悠琉は今日は別々に帰ろうと言ってそれぞれの教室に戻って行った。
放課後になり、美陽は束李が帰る前に束李を捕まえる。

「束李、今日話あるから一緒に帰ろう」

美陽は嫌でも束李の手を離さなかった。

「今日は…」

束李は部活に逃げようとしたが、部活に行く気分にもなれず…。

「うん、いいよ。帰ろう」

美陽の誘いにのった。
束李は龍月に部活を休むことをメールした。
美陽は束李の手を繋ぎ、家に帰るまで離さなかった。

「入って、束李」

美陽は束李を家に入れる。
束李はテレビの前のソファーに座った。

「それで、話って何かな」

テーブルにお菓子とお茶を置く美陽に聞く。
美陽は束李の隣に座った。

「もう知ってはいると思うけど…私、悠琉先輩と付き合ってるの」

知っていたように束李は頷いた。

「どうしても、自分の言葉で言いたくて…。」

美陽は安心したように呟く。
すると、静かだった束李が口を開いた。

「私ね、葵井先輩に冷たい態度取ってしまった。嫌われても仕方ないことをした…っ」

束李が泣きながら話す。
美陽は束李の話を聞いて束李を支えることしかできなかった。
鼻をすする束李に美陽はティッシュを差し出す。

「ん、ありがとう…。美陽酷い態度取ってごめんなさい」

束李は美陽に頭を下げた。
美陽は首を振って束李に言った。

「大丈夫、ねえ束李。先輩の事どうするの?」

美陽は束李に聞いた。
束李はまだ鼻をすすりながら答える。

「告白しないで、諦めるのは嫌。だからって走ることもやめたくない。私はもう自分を曲げたりいない!だから…」

束李は真っ赤に腫らした目で美陽を真っすぐに見つめる。

「いつものように私を見守っていて、美陽」

美陽は笑って頷いた。

「うん!もちろん!」

美陽はいつもの束李に戻ったみたいで嬉しく思った。