ケータイ小説 野いちご

フェイク アフェア ~UMAの姫と御曹司~

3 UMAの姫の受難
3-1

婚約発表から3日が過ぎ、今日から修一郎さんの個人秘書として出勤する。

服装、ヘアスタイル、メイクは愛理さんの指示通り。
でも、かなり不安だ。
だって、私には秘書資格どころか経験も何もない。
今までナースしかしたことがないんだから。

はぁー。

出勤する車の中で何度目かのため息をつくと助手席の佐々木さんに笑われた。

「ごめんなさい、私ったらため息つきすぎですよね!」
あわあわと慌てて謝る。

「いえ、ノエルちゃんだけを笑っているわけじゃないですよ」
と佐々木さんが言った。

うん?
私だけを笑っているわけじゃない?
修一郎さんのことも笑ってるってこと?

隣に座る修一郎さんを見た。

そういえば、ちょっと機嫌が悪い?
ムスッとして前を向いているような・・・。

朝はそんな事なかった。

いつも通り「今朝もかわいいよ」って言ってくれたし。
朝食の時も「今日も美味しい」って。

メイクして着替えてリビングに出て行った時はどうだったかな?
ああ、いつもより早く佐々木さんがお迎えに来てくれて、一緒に玄関に出てそのまま慌てて出かけた・・・。

私は真っすぐ前を向く修一郎さんに小さく声をかけた。

「修一郎さん」

「ん?」

私を見た修一郎さんにシートベルトを引っ張りながらにじにじと最大限に近づいて耳元で
「これから毎朝一緒に出勤すると、私は修一郎さんに『行ってらっしゃい』っていつ言ったらいいんでしょうか?」
とこっそりと聞いた。

「ノエル」

修一郎さんはムスッとした表情を緩めてにっこりと笑った。

「忘れられたかと思った」

「ごめんなさい。タイミングがわからなくて」

「忘れてなければいいんだ。今にする?」
修一郎さんはいたずらっ子のような目で笑う。

えええ?今?今なの?
うーん。

実は毎朝、玄関で見送る時に「行ってらっしゃい」のキスを修一郎さんの頬にしている。
私が自分からキスするのはこの時だけ。
とにかく、修一郎さんと毎朝の約束だったのだ。

チラッと運転席のルームミラーを見た。
まぁ、仕方ない。

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