しばらくすると、外で物音が聞こえてきた。

数台の車のエンジン音とドアの開閉音。
そして次第に大きくなる複数人の足音。

どうやらここに来たのは圭介だけじゃないらしい。父か会社関係者か。


元林さんの顔を見ると私に向かい笑顔で頷いていた。

「お迎えが来たようですね。お嬢さまはここでお待ちください」と玄関に向かっていった。

圭介が来たのなら、私が飲み物をすり替えられて薬を飲まされたという話がどうなったのか詳しく聞けるのだろうか。

考えることがありすぎて、ソファで膝を抱えて丸くなっていると、玄関チャイムの音が聞こえ応対している元林さんの声も聞こえた。
そのうちざわざわと騒がしくなり廊下を走るような足音が聞こえ、がちゃっとリビングのドアが乱暴に開かれた。

「ノエル!!」

顔を上げて驚いた。

「修一郎さん」

圭介が来るはずとばかり思っていたから、突然の修一郎さんの登場に驚きすぎてギクッと身体を後ろに引いてしまった。
それを見た修一郎さんは少し悲しそうな顔をした。
少し前に愛理さんちで見た私が拒否した時の表情に似ている。

それでもすぐに「ノエル、身体の具合は?」と私を気遣う言葉をくれた。

「はい、寝ている間の記憶はほとんどないんですが、今は少しだるいだけで強い後遺症のようなものはないみたいですよ」

「そうか、よかった」
はああ~っと大きく息を吐いて頭に手を当てた。ホッとした顔になり私と目が合う。

見つめ合ったままで口を開けずにいると修一郎さんの背後から圭介の声がした。

「二人は色々話さなきゃいけないことだらけだけど、まずは犯人の話だな」

「ケイ」

「エル、もう大丈夫か?心配したぞ」

圭介の顔を見て心が緩む。

「たぶん、大丈夫」

圭介は大きく頷いた。

「元林さんが付いてるから大丈夫だとは思ったけど、心配したぞ」

「うん、ごめん」

ようよう微笑む余裕ができた。