私たちは食事を済ませてソファに移動した。

「少し話が長くなりますが」
じっと見つめる私に元林さんはいつもの柔らかい表情を少し硬くした。

「お嬢さま、パーティーの途中でジンジャーエールをお飲みになったのを覚えていますか?」

「ええ。あまり美味しくなくてANDOのじゃないのねって思ったわ」

「たまたまですが、私は中年の女がお嬢さまの飲み物のグラスをすり替えているところを見てしまったのです」

ええ?

「それから若い女性と神崎昂輝さんが現れて。私はその中年の女を追おうと思ったのですが・・・すぐにお嬢さまが会場を飛び出されて。あとを追った圭介様が給仕スタッフとぶつかりお嬢さまを見失ってしまう事態になり私がお嬢さまを捕まえたのです。車に乗せるとすぐに眠ってしまわれて、急いで知人の病院に運びました。そこでどうやらグラスに薬が入っていたことが疑われて、すぐに関係各所に連絡をした次第です」

そうなんだ。私が眠くなったのは元林さんのコーヒーのせいじゃなかったのか。

「お嬢さまは治療中もうなされていました。それから飲まされたのはただの睡眠薬だとわかって帰宅が許されましたがお嬢さまが一度目覚めたときに井原さんのところにもご実家にも帰りたくないとおっしゃいまして・・・ここにお連れしました」

「・・・ここは?」

「私の実家の別荘です」

「ご実家の?」

「ええ、あまり使っていません。まあ、たまに妹が家出してきてここを使っているみたいですが」

妹さんがいたのね。知らなかった。

「すぐに圭介様にはお嬢さまの居場所を連絡いたしました。お嬢さまが薬を盛った犯人にまた狙われる危険があるからそのまま寝かせておいて欲しいと圭介様に頼まれました。・・・お嬢さまに井原様には居場所を連絡しないようにと言われましたので圭介様と相談の上、連絡しておりません」

「そう・・・なのね」

元林さんの言うことを信じるのなら、圭介はここに私がいることを知っている。
何があったのかも。

「私は元林さんを信じていいのよね?」