今夜はANDOの子会社の創立記念パーティー。

幼い頃から可愛がってくれた叔父の経営する会社のパーティーに欠席するわけにはいかない。

雲隠れしていた以前ならまだしも、今の私はANDOの娘としてIHARAグループの御曹司と婚約発表までしているのだ。
政略結婚をする予定の私は立派な会社の一部になっている。


あれから1週間。私と修一郎さんとの同居はぎくしゃくしながらも続いていて、修一郎さんは副社長就任を目前に控えて多忙を極めている。

同じ家に住んでいるのに夜はすれ違いばかり。
ただ、彼はどんなに遅くなっても帰宅する。そして早朝出勤がない限り朝ご飯を一緒に食べてくれる。
意識しすぎて今までしていたハグも頬へのキスもできなくなってしまったけれど。

深夜、自室のベッドでうとうとしているとかすかに聞こえるリビングや洗面所の物音。
「ああ修一郎さんが帰ってきたんだ」と思うとそこから私の記憶が途切れる。浅い眠りから安心して深い眠りに入るのだ。

今まで私は修一郎さんにとって『大事なANDOのご令嬢』だから大切に守らないといけないんだろうと思っていた。
でも、それは違うと言ってくれた。
それは嬉しいのに私には素直に飛び込めない。

あれから修一郎さんもそのことについては何も言わない。




コンコン

「ノエル、支度できたか?」

「あ、はい」

ドレッサーの前でボーっとしていたからあわてて自室のドアを開けてパーティーに行く支度が終わった姿を修一郎さんに見せる。

「今夜はいつもより大人っぽい仕上がりだな」

ボルドーのシフォンドレス。

胸元から肩、肘のあたりまで上品な透け感があり、愛理さんイチ押しのドレスだ。

「先週愛理さんに選んでもらって。・・・修一郎さん、どうですか?もしかして似合いませんか?」

これは今までのパーティーで来ていたものより身体の線が出る。
でも、残念ながら私は初めて修一郎さんと出会ったときに彼と一緒にいた女性たちや、この間この部屋に連れてきた女性と違って、メリハリのある身体ではない。
思わず自分の胸元に視線を向けてしまう。