手の平の上、スマートフォンが青白い光を放つ。

私の指先はその光の上をすべり、思うまま文字を入力していく。


(更新、し、ま、し、た。読んで、下、さ、い……と)


最後に『投稿する』と書かれた赤いボタンを画面越しにクリック。

『投稿完了』という可愛らしい丸文字が、星の形の帽子を被ったマスコットキャラクターと共に画面に現れた。



「……よし、朝のノルマ終了」


ホッと息を吐き、そのままスマホの液晶の上部に目線を動かすと『08:12』という表示。

そろそろ家を出ないと学校に間に合わない。

私は開いていたアプリを閉じ、スマホを通学カバンに仕舞った。


「日南子(ひなこ)ー。 何してるのー。遅刻するわよ」


狙いすましたかのように、階下からお母さんの呼び声。

悪気はないのはわかるけど、何となくムッとしてしまう。


「わかってるー。もう出るからー」


少しぶっきらぼうに返事をすると、部屋のすみに置かれた鏡で申し訳程度に身だしなみのチェック。

制服のりぼんを真っ直ぐになおし、靴下をきちんとのばすと、最後に髪を整える。

…しかし、このくせ毛はいくら整えようと、頑固に外へ向かってぴょんぴょん跳ねていく。

仕方なく適当なところで諦めて、鏡の前で小さく深呼吸した。


鏡の向こうから、私を見つめる私の顔。

黒い髪、ぼんやりした目、決して高いといえない鼻。


(………あー、私って………


…………今日も本当にブス)


そう心の中でつぶやくと、カバンを持ち、部屋から飛び出した。