怪我を治せるという、特殊な力の存在を
どこで手に入れたのか

不思議な事に

誰も聞いてこない



知ってからも、何ら変わりなく



「紅音」



土方は、ニコニコと私の頬を撫でる



おかしな奴




「聞きたいことないのか?」


「いつ祝言するかとか?」


「……どうでもいい
土方は、私以外に目を向けろ」


「紅音を見ていたいんだから
仕方ねえだろ!」


たとえ私の顔が好みなのだとしても
どうしてこんなに一途なのだろう

私が嫌がると思っているから


土方は、私の頬か、肩しか触らない



「土方… 私は、恋をしない
だから、妻にはならぬ」


「しないなんて、わからねぇ
俺に恋して、妻になる日がくるかも」


土方のように、前向きな思考は
私には、ない

遠い昔、あったかもしれないが
今は、ない



土方の手が、どんな感触なのか
暖かいのか、冷たいのか


風は? 土は? 木は? 水は?


目に見えるものすべて
私には、感じない



ただわかることは、土方を突き放す為
〝妻には、ならない〟
と言う度に、胸の奥がズキンと痛む



この痛みは……



ただの罪悪感にしては、酷い


きっと、土方がいい人で優しいから
ここの奴らが皆、私を大切にしてくれて
ずっとここにいて欲しいなんて
言うからだ



〝ずっと…〟




そんなものは、ない





皆と私の時の流れは、違うのだから…