「というわけで、のんちゃんは俺の代わりにバスケの顧問をやってくれるってわけ。」

 裏ワザを使ったとかなんとか言ってたけど本来なら部外者の俺がバスケの顧問なんてできるわけがない。
 その辺りは大悟がうまくやったらしかった。

 昔からこいつはその辺の小細工やら騙しが上手いからな……。

「のんちゃん。
 今、俺のこと心の中で罵ったでしょ?
 長い付き合いなんだから口に出さなくたって分かってるよ。」

 ………嫌な奴。

「そう言えばさっきからこの人、あんまり話さないね。
 私のことチビって言ったくせに。」

「へぇ。千尋ちゃんのことチビなんて、とうとう目まで腐ったか。」

「チビはチビ。」

 思わず口を出た言葉に大悟がふふーんと怪しい顔をした。

 あぁいう顔の時は何か良からぬことを……。

「あ!そうだ。忘れてた。
 先生、職員室に行かなきゃ。
 柚羽ちゃん手伝ってくれない?」

 わざとらしい。
 何を企んでるんだか。

「え?はい。うん。」

「じゃ千尋ちゃんは、のんちゃんのこと頼むね。
 トイレ行くのもままならないと思うから付き添ってあげて。」

「ちょ、トイレってこの人、男だよね?」

 大悟に手を伸ばして訴える千尋と呼ばれたチビは不安そうな顔をしている。

 馬鹿だな。
 そんな顔したら大悟の思うつぼ……。

「千尋ちゃんなら大丈夫。」

 反論する間も与えず大悟は柚羽とかいう奴と一緒に出て行った。

「………。」

 ま、こんな奴、放っとけばいいさ。

「え?どこ行くの?」

 立ち上がった俺にチビが声をかけてきた。

 お前も俺のこと放っとけよ。

 無言のまま返事をしない俺の腕をつかんで質問を重ねた。

「トイレ付き添うよ?」

「……馬鹿だよね。お前。」

 腕を振り払って1人トイレに向かった。
 その手を再びつかまれた。

 んだよ。
 だから放っとけよ。

「トイレこっちだし。」

 チビは俺が行こうとしていた方とは逆を指していた。

「………。」

 本気でトイレについて来る気か。
 こいつたぶん変な奴だ。