頬に触れている手をつかんで立ち上がると「お?おぉ?」と言いながらもチビは立ち上がった。

 そのまま連れて行く。



「え?ここどこ?」

 アパートの鍵を開ければ理解したようで驚いた声がうるさい。

「方向音痴のくせに家には帰れるの!?
 どんなオモシロ機能なの!?」

「……帰巣本能。」

「プッ。」

 笑っているチビを部屋に入れ、テレビの前に座らせた。

 久しぶりに触る機器でも思い出すもので、それほど手間取らずに操作できた。

「これ、俺。」

 ワァーワァーうるさいテレビから実況の声が流れる。

「うわぁあ!決まった!!!
 澤村のシュート!
 これで試合の流れが一気に変わったー!」

 自分でも久しぶりに見た映像。
 見たくないと思っていた。

 それを食い入るように見るチビの後ろから頭を眺める。

「………あんたすごい!え?」

「どうだ。参ったか。」

 それだけ言うとブラックアウトしていた。
 3日連続とか先が思いやられる。