お父さんが私の元へ戻ると
強く私を抱きしめた。


「大丈夫だよ、お母さんは。」


優しい声で話を続けるお父さん。


「今はちょっと頭を強く打ったから意識が戻らないけど、脈拍も落ち着いてるし
明日には目を覚ますだろう。て主治医が言ってたよ。」



ほんとに?


明日には目を覚ますの?


さっきまで、今日が山場だって
そう言われてたのに…


信じていいの?



少しの安心感が出たのか
ドッと涙がこみ上げて来た。


お父さんは、さっき以上に
私を強く抱きしめてくれた。



お父さんは、いつも優しくて
嘘は1回もついたことなんてない。


私が小学生の頃、
友達と遊んで門限に遅れた時に
門限とは、家での約束事だと言った。

守れない約束は最初からしてはいけない。
ということを教わったのを
今でも鮮明に覚えている。


会社でも一目置かれているお父さんは
真面目で冗談すら言わない人だけど
とても優しい人。


人を傷つけない嘘だとしても
絶対に嘘はつかない人。





だから、
今は、お父さんの言葉を信じるしかないよね


そう納得するように
自分に言い聞かせていた。








窓の外が、少し明るくなってきた頃
お母さんが目を覚まし
いつものような優しい笑顔で
私を見つめてくれた。




本当に良かった…


モモちゃん、お母さん目を覚ましたよ。



やっぱりお父さんは嘘をつかない人だったよ