家に着き、暴れれる格好に着替える。

やっとできる。大掃除が…。

いつもの赤のパーカーを着る。いつもと違うのはズボンからスカートに変わったこと。

黒のミニワンピースに、黒の太ももあたりまである長い靴下。男と言う噂を消すつもりだ。

ウィッグを取って、フードを被った。ピアスをつけ、黒のリュックを背負う。

リュックの中身は、携帯、財布、パソコン、チュ〇パチャップスくらいかな?

チュッパチャプスはいつもなめている。唯一食べるものと言っても過言ではないほどだ。

時刻は7時ちょうど。いこうかぁ。

黒の厚底ブーツを履いて、マスクをして準備Ok!

厚底は動きやすくておすすめ。


マンションを出て歩いて繁華街に向かった。

繁華街に近づいていると、『キャー‼』と女の子の声が聞こえた。

「路地裏の方か…?」

勘で行くと大当たり、女の子の服に手をかける男が一人…。
その周りを囲んでいる男が5人。

「なぁーにしてるの?俺も入れてー?」

男たちに話しかけると、気持ちの悪い目で撫でまわすように下から上まで見た。

「へぇー。いい女じゃねーか。巨乳かぁ…グヘヘ」

きも。

「た、助けて…」

泣きながら女の子は私に訴えた。

「ねぇ、俺と相手してよ?」

「おう。いいぜ?ねぇーちゃんは大歓迎だ!」

「やった!」

気持ち悪い奴。私の遊びは快楽じゃない。激痛だ。

「じゃあ、遠慮なく」

バキッ!

女の子を襲ってた男に近づき、顔面に蹴りを一発お見舞いしてやった。

「お、お前!何者だ!」

見張りでもしていたであろう男が聞いてきた。

「何者…。鬼、だよ。」

驚きよりかは疑いの目の方が強い。

「鬼は、男のはずだ!」

「あれ?知らないの?最近女説が浮上しただろ?もう面倒くさくてな。」

髪が長いのによくもまぁ、今まで男だと思えたよな。

「君らも、潰すよ?」

ボコッ!バキッ!…

「ふぅー。全員伸びたな。大丈夫?」

男共を気絶させ、女の人に近づいた。

「あ、ありがとうございます…。」

「男か女どっちかわからんないって顔だね!」

彼女の顔から、読み取ったことを率直に口にした。

「へっ?!」

「俺は女だよ!」

そう言って、マスクとフードを取った。

「わぁ!可愛い!可愛いのに強いのね!」

「ありがとう。家は?どうしてここへ?」

お世辞を流して本題に入る。

「じ、実は母親が死んでしまってお母さんの遺産を親戚が貰おうと必死で、私を引き取ればお金が入ると思っているみたいで…。」

この子は幸せから急に地獄にいる気分になったのだろう。

「だからここに逃げてきたの?」

「はい。」

「帰るところはあるの?」

「ないです。家は売っちゃて。そのお金も私のものになっていて…。」

「そう。私の家においで。」

「えぇ?!そ、そんな!助けてもらった上にそんなことまで!」

「いいよ。どうせ一人なんだろう?俺は玲菜だ。」

「わ、私は山口詩織です。(やまぐち しおり)ほ、本当にお世話になってもいいんですか?」

「いいよ。私も一人だし。母親のお金も、取り返してやる。」

「え?本当に?!何から何までありがとうございます!」

「いいよ。その代わり、この後も付き合ってもらうよ。あっ、俺は高校一年だ。」

「えぇ?私も高校一年生です!」

「そうか。なら、敬語はなしだ。」

「う、うん!」

詩織は、すごくかわいくて放っておけなかった。
もうすぐ死ぬのにこんなことしてどうすんだ…。

「行こうか。」

「うん!」

詩織を連れて、配慮をしながら掃除をして帰ろうとした時だ。

「玲菜ちゃんは喧嘩が強いね。すごい。」

「そうか?とりあえず家に帰る。」

「うん!」

喧嘩は強いんじゃない。強くならなければいけなかったんだ。

自分で自分を守るためには…。


マンション前に来た時、詩織は言った。

「す、すごいね…。ここ、すごく高いところじゃん。」

「そう?詩織はお金持ちだろ?見慣れているんじゃないのか?」

「そこまでお金持ちじゃないよ!玲菜ちゃんのこともっと知りたい!」

「部屋でな。」

「うん!」

あぁ、どうしてか詩織といると落ち着く。安心する。


部屋に着き、詩織に食べさすご飯を作った。簡単なものだが、オムライスを作った。

「お腹空いているだろう?食べろよ。」

「あ、ありがとう!いただきます!ん?玲菜ちゃんは食べないの?」

「俺はいらない。」

不思議そうにはするがそれ以上聞いては来なかった。

詩織がご飯を食べている間、詩織の前のソファーに座り詩織について調べた。

「ごちそうさまでした!すごくおいしかった!」

「そうか。詩織、お金は余裕で取り返せそうだ。」

「え?!本当?よかったぁ。」

遺産は全て詩織に渡すという遺言書を母親の秘書が持っているらしい。家のお金全てを。

「明日取りに行こうか。」

「うん!」

元気そうでよかった。そう思っていると、

「玲菜ちゃん。教えて、玲菜ちゃんのこと。私はこれからずっと玲菜ちゃんといたい!今日初めて会ったけど、信用したい!」

そんなこと言ってくれるなんて、すごく嬉しかった。

「あぁ。俺も、いや私も詩織といたいと思ったよ。」

それから、病気のこと、家のことすべて包み隠さず話した。

「そっか。私より辛い経験をたくさんしてるんだ。玲菜ちゃんは喧嘩だけじゃなく、心も強いね!」

「そんなことはない。」

「ううん。そんなことある!」

「ありがとう。寝ようか。」

「うん!」

本当に、いい子だよ詩織は。

ただ忘れていたことが、1つ…。

「あっ、この家…ベット一つしかない!」

「え?大丈夫だよ!寝れる!」

ま、まぁ。キングサイズだし寝れるけど、2人でいいのかよ。

こうして2人は深い深い眠りにつきました。