(水神の葵衣side)

正直、驚いた。

1人の女のためにあの怜奈が頭を下げるなんて。

余程大切な友達なのだろう。

まずは、怜奈の本名を聞き出したことだし調べますか。

カチッカチッ

しばらく、パソコンと睨めっこをしていた。

「だめだ!情報が出てこないにしてもほどがあるだろう!」

これでも俺は、世界№3のハッカーだぞ!

これは、旬でも無理という事か…。

まぁ、一応頼んでみるか。

ガチャッ

幹部室のドアを開け、旬を呼ぶ。

「なぁ、この名前ハッキングしてくれるか?」

「あ、あぁ。分かった。」

旬が部屋にこもったから、幹部室で待つことにした。

「ねぇ、葵衣。詩織ちゃんって姫にできないの?」

美希がそう聞いてきた。

「それは無理。姫は居ればいる程困る。」

「そっかぁ。詩織ちゃんってさぁ、怜奈ちゃんの話をすると笑顔になるんだよね~。」

「どんな話をしてた?!」

あの子は最も怜奈に近い存在。あの子から情報を聞き出せば…!

「それがね、詳しく聞こうとすると話してくれないんだけど、家でのちょっとした事とかだと話してくれるの。」

あの子、見た目に似合わず口が堅いのか。
なら聞き出すのは無理だな。

「はぁ。そうか。」

ガチャガチャ!バンッ!

「葵衣!ちょっと来い‼」

怖い顔をしながら部屋に入ってきたのは旬だ。

すぐに旬の後を追い旬の部屋に向かった。

「これ!見てみろ!」

パソコンの画面を覗き込んだ。そこに書いてあったのは“松井玲菜”は“鬼”として活動していると書かれていた。

「これって…!」

「これ誰の名前なんだ!」

「桜木怜奈の本名だ。これしか出てこなかったのか?!」

「あいつの?!あ、あぁ。頑張ってもこれしか無理だった。」

「そうか。このことは誰にも言うなよ。」

「あぁ。分かった。」

あいつが、あの鬼?

俺たち水神の命の恩人だというのか?