『……俺がお前のこと好きって言ったら、どうする?』



やけに真剣な目をした郁也の言葉はウソに思えなくて、だけどそれが本音だったらそれもそれで結構大事件なわけで。

ただでさえ郁也はモテる。顔が整っているだけじゃない。全体的にカッコイイを網羅した学校一の王子様。

それは郁也の「表の顔」で、奴の本性はとんでもない性悪男だって知ってるんだけど。……だけど。

本当は優しいことも、私はちゃんと知ってるんだ。




―――もしまた恋をする日が来たら。



何度もそんなことを考えたことがある。でもその度に蓋をして、あの頃の思い出を消そうって必死に笑顔を作って来た。


それなのにまた、どうして思い浮かんでしまうんだろう。


郁也の気持ちが本当かどうか、あの言葉を信じた方がいいのか悪いのかなんて全然わからない。けど……。


もし、私が郁也を信じるなら。


あの人の顔をもう忘れなきゃいけない。あの時のことに完全に蓋をしなきゃいけない。



あれだけ傷ついたのに、まだどこかで彼を心に残してる自分が情けない。



信じれない。
もう、男の人を信じることはやめた。
信じないって、決めた。


それなのにーー郁也の気持ちを少しだけ信じて見たいって思ってしまう、私はバカなのかな。



ーーあれは、私が中学2年の時のこと。