【林檎 side】

静かな教室に、二人の吐息が漏れる。何ども重ねられる唇は抵抗しても離されることはなくて、だんだんと体の力が抜けていくのがじぶんでわかった。


なんで私、キス、されてるんだろう?



「……っく、や」

「…っ、口、開けろ」

「はあ? っん……」



ちょっとだけ離れたと思って口を開いたのが間違いだった。滑り込んできた舌にビックリして郁也の胸を強く押すのに、郁也はビクともしない。

この、オオカミがッ!

そう思いつつ、体の力は抜けていく一方だ。こんなの、知らない。キスってこんなに苦しくて、こんなに熱いものだったんだ。

テレビや漫画でしか見たことないから、全然わかんないよ。テイウカなんで私、郁也を受け入れちゃってるんだろう。


ファーストキスの、ハズなのに。



「ね、くるし……」



なんとか喋ろうとするのに、郁也はそれを許してくれない。慣れたように私の舌を絡めとって、啄むようにキスをして。



雰囲気に、飲み込まれてしまう。