「おはよう、舞!」

下駄箱で後ろ姿を見かけたので思わず駆け寄って肩を叩いた。振り返った舞は私を2度見して。


「林檎っ?!」


目を真ん丸にしてそう言うから、思わず笑ってしまった。


「生きてたのね、よかったわ……」

「もう、舞ったら大げさだよー」


いつも以上に明るく振舞って舞の隣へ並ぶ。スクールバックをぎゅっと握りしめる。実はあの日から、3日ほど学校を休んでしまっていた。


「あ、そういえば、林檎が休んでる間に席替えしたよ」

「ああ、そうなんだ……」


一瞬の沈黙。

席替えした、イコールもう郁也の隣の席じゃないってこと。完全にただのクラスメイトになってしまったみたいだ。


「……林檎?」

「あのね…….郁也とは、別れたよ」


〝別れた″なんて、そんな言葉を吐くことが、こんなにも辛いなら。ーー私の選択が間違っていないと、教えてくれるものはなんなんだろう。

あの日、私の言葉に郁也は『それがお前の答えなんだな』と言って、別れを告げた。言ったのは私、頷いたのは郁也。

『ぜってえまた振り向かせる』って、帰り際そう言って。……でもきっとむりだよ、学年イチの王子様を手放すようなこんな大バカ者、きっといつかバチが当たるんだ。


舞は、うん、とも、え、とも言わず、いきなりぎゅっと手を握ってくれてた。


きっとそれは、私の目に涙がたまっていたからなんだろう。自分で振っておいて、何を悲しんでるんだって感じなんだけどね。