鷹の死骸は、地中海に沈んでいった。

それを見送りながら、ガンスロンはそのまま…エジプトを目指した。


ガンスロンの後頭部から、飛行艇に移った潤一郎は、すぐに補給部隊に連絡を取った。

ミサイルは殆んど撃ち尽くし、あと数発の予備弾しかなかった。


まどかは端末機と、戦いが終わってから、ずっと格闘していた。


「どうじゃ?」

潤一郎は、ディスプレイを横から覗いた。

まどかはため息をつき、マウスから手を離し、

「やはり…すべてのシステムを、ここに移行するのは、無理のようね」

ふうと息をついた。

「ガンスロンのコクピットに、あたし達が入るわけにいかないし……」

「ガンスロンは、真由しか搭乗できない。本当は、真由がすべて操縦しなければならないのだが…」

潤一郎は、ガンスロン内で蹲っているだろう真由のことを心配していた。


「陸地に上がってから、一度…ガンスロンのコントロールシステムを組み替えてみます」

まどかは、端末機からの操作を諦めた。


「……そうじゃな…それがいい。次は、猿だ。真由が、戦えるとは思わない」


人の形に似た猿を、真由が撃てるはずはない。


「だが……印は、四つ集まった。あと一つ」

潤一郎は飛行艇から、ガンスロンを見上げながら、

「ここで、負けるわけにはいかない」





ガンスロンはゆっくりと、下半身を回転させ、ホバーリングシステムで、海面から、地上へと上がった。


その瞬間、巨大なブーメランが飛んできて、ガンスロンの胸にぶつかった。


「きゃあ!」

コクピット内で、欝に入っていた真由は、今までにない程の衝撃を感じ、シートから転げ落ちた。

コクピットは、ガンスロンの心臓の部分にあったからだ。

どこの木でつくったのか…ブーメランは、木でできていた。

ブーメランは、ガンスロンに当たると、回転しながら、

どこからか現れた猿に戻っていった。