じわりじわりと太陽はでしゃばり始めているけど、吹く風はまだ爽やかだ。

 ケイの背中をただ見つめて歩く。彼は手を繋ぎたがったが恥ずかしいと言えば肩をすくめて頷いた。

 どこに向かうか聞けば「秘密の場所」といたずらに笑う。私はいつものように呆れ顔を浮かべて、弾む気持ちをカムフラージュする。

 なのにケイはそれを見透かしたみたいな笑窪を向けて、私の歩幅に合わせて隣に並んだ。

「知ってる?」

 少し顔を寄せて耳打ちするケイは楽しそうだ。

「何?」

 興味がない様な素振りをしながら耳を傾けていると……

「俺とハスミ、お似合いのカップルって噂されてるんだって」

 私の足が止まる。

 ケイも二歩先で止まった。私がどんな表情なのか、ケイの曇った表情で想像はつく。

 我慢しないといけないのは分かってて、だけど私の口は吸った息を吐き出すように歯止めがきかない。

「くだらない。噂話なんか大嫌い」