重く連なる雲が太陽をちらりとも覗かせない。午後からの降水確率は高めで、昼休みになると飛んで出ていく男子たちも、今日は教室に留まっている。

 今にも雨が降りそうな空に箸を持つ手が止まる。

「ハスミちゃん?」

 ハルちゃんも空になった弁当箱を巾着に入れる手を止めて私の顔を覗き込んだ。

「ううん、なんでもない」

 自分の弁当箱に目を戻す。

 どうしてか私は人よりもご飯を食べるのが遅い。ようやっと弁当箱に米粒一つなくなった時、ハルちゃんは“お花摘み”に行ってくると言った。

 お花摘み……ハルちゃんらしい言い方だ。

 一緒に行こうかと聞くと、ついでに友達の所に用があるからと封筒を手に教室を出ていく。

 その後ろ姿が軽やかに弾んでいて……あの封筒の中身がライブのチケットだと勘づく。

 ハルちゃんはアイドルグループのファンであるらしい。

 何度か雑誌の記事や写真を見せてもらったが、そこには確かにアイドルらしい美少年が集まっていた。