ゆっくりとまぶたを開けた瞬間、あまりのまぶしさに目がくらんだ。

それと同時に視界に入ってきたのは、限りなく広がる白い空間だった。右も、左も、上も下も、すべてが白い。ゆっくりと見回してみてもなにもない。体ごと一回転してみたけれど、やはりそこには白い世界が広がっているだけだ。

私以外に誰もいない。あるのは果てしない真っ白な空間と、セーラー服を身にまとった自分の姿だけ。

おそるおそる一歩踏み出してみたけれど、足音もしなければついてくる影もなかった。いったいここはどこなんだろう。なにもない、ということに対する恐怖は不思議と湧いてこなかった。ただ、自分以外なにも存在していない世界は、あまりにあっけなく味けない。

「あ……」

声が出なかったらどうしよう、と思いながら息を吐(は)くと、思いのほかすんなりと吐き出した息は音に変わった。
いつもの自分の声だ。なにもないけれど、動くこともしゃべることもできるらしい。

試しに手のひらを見つめながら指先を動かしてみたけれど、普段と変わらず私の意志に従ってそれは動いた。

「意味わからない……」

誰もいないとわかっていながら、そうつぶやいてゆっくりと視線を上げた。その瞬間、私は自分の目を疑った。

なぜならそこに、〝知っている人〟が座り込んでいたからだ。

さっきまで誰もいなかったはずなのに。果てしなく続く真っ白い空間の、ほんの数メートル先。膝を曲げて座り込みながら、コテンと首をかしげている。長い前髪からのぞく瞳は、確かに私のことをとらえていた。