気付いた時には、電車はもういなくなっていた。
電車のガタンガタンという音も聞こえない。

放心状態で俯く私と、さっきのは夢だったんじゃないか、と思わせるくらい涼しい顔をした金内くん。


「……金内くん、その。さっきのはなんでしょうか」
「なにって、キス」


戸惑いと嬉しさから敬語になる私をよそにさらりと答えられ、変な呻き声を上げそうになる。
き、キス…をされたことは正直嬉しいけど、手放しで喜べはしない。
…キスの意味を問わなければ。