「とは言ったけど、やっぱりやめておけば良かったよ……!」
「今更何言ってんだよ。腹くくれって。」


あれから結局保健医が帰ってくるのを待つこと10分。
そして教室に着くまでに5分。計15分。
もうそろそろHRも終わってしまうだろう。

「何、サボりてーの?」 「!?」


そう聞いてやれば大袈裟に驚いてみせる瀬奈

「まさか!私は隣の子みたいな不良になる気ないもん、一応首席で通ってるんだからね!」
「あそ、なら行くか。」
「え?、ちょっ!」


戸惑う瀬奈を置いていつかの時のように扉を開け瀬奈の手を引っ張りながらしらっとした態度で言う。

「すみません、遅れました。」


あまりにも俺が堂々としていた為か、向こうも何を言えばいいのか分からなかったようでぽかんとした表情になる。

「すっ、すみませんでした!」


途中で我に帰った瀬奈も慌てて謝った。

その言葉で担任も我に帰り俺達の方に向かってヒラヒラと手を振った。

「おう、聞いてる聞いてる。」


引っ張るだけの為に繋がれていた手はいつの間にか強い力で握り返されていた。

担任が席に着け、というように視線で促してきた為、俺達も手を離して席へと向かう。

体中に刺さってくる好奇の視線に俺の後ろで瀬奈が縮こまったのが分かった。
まぁ、俺はちっとも気にしちゃいないが。

そんな中、もちろん誰も声を掛けようとしてこなかった。
だが、1人だけ我慢出来ずに俺達に話しかけてきた奴がいる。

「へー、堂々と遅れてきてもお咎めなしかよ
一体どんな手を使ったんだよ。」


この学校で話しかけられたくない奴No.1に輝くであろう人物。

「おい、聞いてんのかよ。」


佐伯結平である。