「優花ちゃん、これあげる」

「えっ?」

言葉と同時にデスクの上に置かれたのはかの有名な「萩の月」。

「うちの主人が昨日まで仕事で仙台に行ってたのよ。お土産に買ってきてくれたんだけど、優花ちゃんにもお裾分け」

そう言ってにっこりと微笑んだのは隣の席の小倉さん。同じ営業事務の大先輩で、ここに来てからというもの私は彼女にお世話になりっぱなし。
確かお子さんが二人いて、上の子は中学生になるとか言ってたっけ。
そんなのが信じられないくらいに若々しくて綺麗な女性だ。

「わぁっ、いいんですか? ありがとうございます~!!」

「どういたしまして。良かったらお昼の時に食べてやって」

「はい! 何があってもいただきますっ!!」

威勢良く答えた私に小倉さんがふふっと笑う。

あぁ、この女神様のような笑顔に癒されるのよ…!

娘だなんて言っては失礼だけど、それくらい私に良くしてくれる彼女は、こうして時々私をうんと甘やかしてくれる。
最初こそ恐縮していたけれど、だんだんそれにも慣れてしまって今では私も遠慮がなくなってきた。

だから今日も有難く頂戴することにします。